【産地レポート】ALO COFFEE・タミル氏 現地インタビュー
- Dawit Woldetsadik
- 39 分前
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▼目次

価格高騰の年に、品質とどう向き合うのか
Introduction|はじめに
2025年のエチオピア・コーヒー収穫シーズンは、例年とは異なる難しさを抱えています。
降雨不足による収穫の遅れ、チェリーの供給減少、そして原料価格の大幅な高騰。
こうした状況の中で、生産者はどのような判断をし、どこに価値を見出そうとしているのでしょうか。
本記事では、現地で行った ALO COFFEEのタミル氏へのインタビューを、日本語訳原文はそのまま掲載し、2025/26年クロップに対する考え方や、今後の展望をお伝えします。

■ 国際マーケットの価格高騰に、どう向き合うのか
―― 国際マーケットの価格高騰がある中で、今年はどのようにバランスを取っていく予定ですか?
タミル氏:
そうですね。私たちには常に一貫したやり方があります。
今年は 量を抑え、その分クオリティを高める という方針で進めています。
価格が高くなっても、品質が良ければ理解してくれるパートナーがいる。
長年一緒に仕事をしてきた親しいバイヤーたちには、今の状況をしっかり説明していますし、彼らも協力してくれます。
だからこそ、ボリュームを抑えながら、品質に集中する という判断をしています。

■ 今年の収穫に対する期待
―― 昨年は ALO Coffee から非常に印象的なロットが数多く生まれました。今年はどのようなロットが期待できますか?
タミル氏:
期待値は毎年とても高いですね。毎年「何か新しいものを期待している」と言ってもらえますし、その期待に応えたいと思っています。
チームも現場レベルで本当に懸命に取り組んでいます。昨年すでにスタートしているプロジェクトはいくつかありますが、今年は新しい大型プロジェクトはありません。
その代わり、今年は収量が少ない分、より小さく、より厳選したロットを丁寧にキュレーションする年になります。
つまり今年は、ボリュームは少ないものの、よりキュレートされたロットが増える年だと言えます。
ただし、すべてはこれからの雨次第です。もし1〜2週間以内に雨が降らなければ、エチオピア全体にとって非常に厳しい年になるでしょう。


■ 日本のロースターへの想い
―― 日本のロースターについて、何かコメントはありますか?
タミル氏:
今年は娘のことで忙しく、日本を訪問できなかったのが残念でした。でも、日本は私の心の中でとても特別な存在です。
日本のロースターからの愛情やリスペクトは、毎年「もっと品質を高めよう」という強いモチベーションになっています。それが、私が毎年クオリティを押し上げ続ける理由です。
今年も、皆さんと一緒にプロモーションしている Bona のロットをはじめ、本当に良いロットを届けたいと思っています。
今は乾季なので見た目は少し落ち着いていますが、雨が来れば、この Alo ステーションからも非常にエキサイティングなロットが生まれると思います。
他はまだ収穫が始まっていませんが、もし雨が来れば、1〜2週間以内に小規模な収穫が始まる予定です。
日本のロースター、そしてダウィットような長年のパートナーのために、カスタマイズした特別ロットも用意します。
だからこそ、今年もダウィットが早いタイミングで来てくれた。Ethiopian Coffee House と何か特別なものを一緒に作れる年になると思っています。



■ プライベートオークションと SCAE 設立について
―― プライベートオークションや、SCCE(Specialty Coffee Association of Ethiopia)の設立について教えてください。
タミル氏:
プライベートオークションは非常に成功しました。日本の皆さんのサポートには本当に感謝しています。
そのおかげで、エチオピアの記録を更新するオークションになりました。
来年もプライベートオークションを行うかどうかは、その年のカッピング結果次第ですね。

一方で、SCAE(エチオピア・スペシャルティコーヒー協会)を立ち上げました。私はその創設メンバーの一人です。
これまでの5年間、私は個人として、会社として、限界まで品質を押し上げる努力をしてきました。
でも今は、個人ではなく「国として」動くタイミングだと思っています。
日本のSCAJが日本のコーヒー業界を変えたように、SCAEもエチオピアのコーヒー業界に同じようなインパクトを与えたい。
エチオピアには非常に明るい未来があります。
今後2〜3年で大きな存在感を築き、その後は次の若い世代にバトンを渡したいと思っています。

■ エチオピア・スペシャルティコーヒーの未来
―― SCAEの具体的な目標について教えてください。
タミル氏:
SCAEには 5つの柱 があります。
1つ目は、エチオピア全土から最高品質のロットを集めるプライベートオークション。
その収益は、研究開発や品質向上に再投資します。
また、個々の会社ではなく、国として一体となって国際展示会に参加・発信することも重要な柱です。
パナマがコーヒー業界に与えたインパクトは素晴らしい。
エチオピアにはそれ以上のポテンシャルがあるのに、まだそれを十分に市場に届けられていません。
政府の支援も必要ですが、今集まっているメンバーは本当に情熱的です。現在、理事は9名体制になりました。
日本、台湾、中国、韓国、アメリカ、UAEなど、エチオピアを愛する海外のパートナーと手を取り合うことで、これから数年で非常に面白い未来が作れると信じています。

■ 2025/26年クロップのテーマ
―― 最後に、日本の皆さんへメッセージを。
タミル氏:
今年は収穫が始まったばかりですが、今年一番大きな変化は「ウォッシュト回帰」です。
昨年も多くのウォッシュトを作りましたが、今年はさらに ウォッシュト中心の構成 になります。
アナエロビックは減らし、クリーンで美しいウォッシュトを追求します。
「Let’s go for washed!」
それが今年のテーマです。


■ 編集後記
今年は日本での再会が叶わず、現地で久しぶりに顔を合わせることになりましたが、そんな時間の空白を感じさせない、いつものタミルさんが変わらず温かく迎えてくれました。
信じられないほどの価格高騰が続き、今年もまたクレイジーな状況ではありますが、悲観的な様子はまったくなく、むしろこれまで以上に期待と希望に満ちた表情が印象的でした。
その姿を見て、「今年もきっと大丈夫だ」と自然に思えたのを覚えています。
厳しい状況についても率直に語ってくれただけでなく、エチオピアコーヒーの明るい未来に向けて、力強い言葉を聞かせてくれました。
今年もますます目が離せない ALO COFFEE。
今後の展開に、ぜひご期待ください。
