イベントレポート:【Gesha Village オーナー レイチェル氏と語る】特別トークセッション
- Dawit Woldetsadik

- 7月8日
- 読了時間: 8分
▼目次
Gesha Village共同オーナー レイチェル・サミュエル氏と語る特別トークセッション

2025年6月27日、Ethiopian Coffee Houseに新たに完成したイベントスペースにて、記念すべき初のイベントを開催しました。
第一回目のゲストとしてお迎えしたのは、Gesha Village(以下ゲシャビレッジ)の共同オーナー、レイチェル・サミュエル氏。
オンラインでの特別トークセッションを通じて、今年の収穫状況や気候変動の影響、さらにはゲシャビレッジが取り組む環境保全や品質へのこだわりについて、率直かつ熱意を込めて語っていただきました。
本レポートでは、イベント当日のレイチェル氏の言葉や語り口、その熱量をできる限り忠実にお伝えできるよう、実際の発言内容を軸に構成しています。
■ はじめのご挨拶
レイチェル氏:
皆さんにお会いできてとても嬉しいです。今日は、Gesha Villageについて何でも聞いてくださいね。 10年以上前に立ち上げたこの農園では、一本一本の木に心を込めて育ててきました。
今年のクロップも素晴らしい出来で、みなさんもうカッピングしていただけましたか?
本当に素晴らしいロットが揃っています!7月23日にはオークションも予定していますので是非参加してくださいね!

■ 2024–25年クロップについて
レイチェル氏:
今年は、本当に大変な一年でした。でも同時に、信じられないくらい特別な年でもあったんです。
地球温暖化の影響で、収穫量はたった前年の25%。
でも、そのわずか25%の豆たちは、奇跡のように素晴らしかったんです。
まるで厳しい状況を生き抜いた証のように、風味がぎゅっと詰まっていて、本当に感動的な味わいでした。
ーー 開花期に続いた異常な長雨によって、コーヒーの花が咲かず、収穫量が激減。その一方で、実った豆は凝縮された風味を持ち、強く印象に残る出来だったといいます。
■ 異常気象の影響と原因
レイチェル氏:
エチオピアでは本来、太陽が必要な開花の時期に信じられないほどの雨が降りました。
花が咲かず、命が芽吹けなかった。それが最大の原因でした。
ーー また病気や虫の影響はなかったものの、「バランスを欠いた気象」によりこれまでにないダメージが生じたとのことです。
ただ一方で、今年は様子が違い、たくさんの花が咲いているそうです。「それを見ていると、『ああ、来年の2025-26クロップはきっと豊作になる』と、希望が湧いてきます。」とも話していました。
■ 気候変動への向き合い方
レイチェル氏:
正直、自然に対して私たちにできることは限られています。雨を止めることはできない。でも、私たちは祈るような気持ちで、一つひとつの工程に向き合っています。
ーー 気候はコントロールできなくとも、収穫後の処理や乾燥、品質管理など、人の手で守れる部分に全力を尽くしているそうです。

■ 環境への取り組み
レイチェル氏:
農園では、環境への意識をもって、次のような取り組みを行っています。
有機物を活用したコンポスト(堆肥)の使用
自然素材(竹や土でできた泥レンガ)で建てたスタッフの住居
化学資材を極力使わない農法
自然と“けんか”してしまうような素材は極力使わないようにしています。
私たちの暮らしや仕事が自然と調和するものであってほしい、そう願いながら一つ一つ選んでいるんです。
そういった「自然を思いやる心」が、私たちだけでなく地域の人たちにも伝わっていくものであってほしい。
そうすれば、環境を傷つけてしまうような素材をわざわざ持ち込む必要もなくなるし、自然と共に生きていく知恵や感覚が、次の世代にもつながっていくと思うんです。

■ ゲシャビレッジのプロセスについて
レイチェル氏:
ナチュラルプロセスについては長年取り組んできて確かな自信があります。
でも最近では、ウォッシュトやハニーもとても素晴らしい仕上がりになっています。
どれひとつとして、マニュアル通りのやり方ではありません。
現地の処理チームは、コーヒーの状態を見て、触って、香りを感じて、今どう動くべきかを知っています。
特に気候が不安定な年には、本当に細やかな判断が求められます。
乾燥工程が15日で終わるときもあれば21日かかることもある。毎日、豆の様子を見て決めています。
──ナチュラル、ウォッシュト、ハニーについて
レイチェル氏:
ナチュラルはとても人気があり、年々クオリティも上がっていると感じています。
そしてウォッシュトも、本当に見違えるほど良くなっています。今年も素晴らしい出来でしたよ。
ハニーもまたとても印象的な味わいで、本当に魅力的なんです。
でも、やっぱり私の一番のお気に入りは──ナチュラルとウォッシュトですね。
──特殊プロセスについて
レイチェル氏:
モストアナエロビックなどの特殊プロセスについては、今年は収穫量が限られていたこともあり、自然なかたちで届けることを大切にしようと決めました。
オークションには、1〜2ロットほどしか出せていませんが、どれも本当に素晴らしいクオリティです。

■ 「Oma Natural」への思い
レイチェル氏:
Oma Natural」は、ゲシャビレッジのコーヒーの中でもとても人気のあるロットです。
多くの方に愛されていて、私自身もとても気に入っているコーヒーなんです。
“Oma”という名前は、この地のリーダーの名前から名付けました。
G31(Gesha1931)という品種で、フローラルでフルーティー。時間が経つほどに味がどんどん良くなっていくんです。
このコーヒーは、もう10年近く毎年素晴らしい出来で、まさに“特別な一杯”だと感じています。

■ 土壌と気候、ワインとの違い
レイチェル氏:
この土地には、もともとコーヒーが生きる準備が整っていたんです。数本の古い木が最初から生えていて、土地がすでに「わたしはコーヒーを知ってるよ」と語りかけてくるような、そんな感覚がありました。
コーヒーを育てるって、本当に学びの連続です。適した土壌を整え、手をかけ、栄養を与え、適切な種を選び、気温のコントロールも必要です。
ーー 自分の農園で朝にコーヒーを、夜にワインを楽しむのが夢だと語るレイチェル氏。ワイン栽培に必要な土壌をわざわざ持ち込んでみたけれどうまくいかなったそうです。
レイチェル氏:
ゲシャビレッジの豊かな土壌ではワインは育ちませんでした。
ワインには“ストレス”が必要で、コーヒーは手をかけて育てる“愛情”が必要なんです。
土にも、木にも、そんな環境を用意してあげることが大切で、仮にそういった環境を人工的につくることもできたとしても、それには並々ならぬ献身が必要だと思います。
■ 今後の展望
レイチェル氏:
新しい農地も加わり、今は実験的な栽培や品種へのチャレンジを始めています。
数年後にはかたちになって、皆さんにもご紹介できるようになると思います。
今はその準備の真っ最中で、チームみんなワクワクしながら取り組んでいます。いろいろな可能性を試してみること。それ自体が、私たちにとってすごく大切で、希望に満ちた取り組みなんです。

■ 最後に──レイチェル氏から参加者へのメッセージ
レイチェル氏:
みなさんが私たちのコーヒーを理解し、エネルギーと情熱を注いでくださっていることに、心から感謝しています。それは私たちにとって、何よりの励みです。実際、日本という国全体に、こうして思いを共有できていることがとても嬉しいんです。 私たちが日々取り組んでいる大変な作業や努力を、ちゃんと理解してくれる方がいるというのは、本当に幸せなことです。

