【2025年版】エチオピアコーヒーの価格上昇は続く?気候変動の影響とこれからの展望
- 優真 高崎
- 4月1日
- 読了時間: 7分
更新日:4月17日
▼目次
生豆価格の推移
最近、コーヒー生豆の価格が上昇していることを、多くのロースターや消費者の方々も実感しているのではないでしょうか。
ご存知の通り、スペシャルティコーヒーは味や品質に優れ、農園や精製方法などの詳細な情報が明示されるため、コモディティコーヒーよりも高値で取引されます。
つまり、コモディティコーヒーの価格が上昇すれば、スペシャルティコーヒーの価格も上がることを意味します。
これまで生豆の価格は増減を繰り返しながら現在まで推移してきました。その主な原因は異常気象による収穫量の減少で、需要と供給のバランスが崩れることでした。これは周期的なもので、異常気象の年の翌年には供給が回復することで高騰した価格も元に戻ることが通例でした。
しかし、これが近年変わりはじめているようです。
なぜ生豆価格が上がり続けているのか?
要因①需要>供給

コーヒーに限った話ではありませんが、モノの価格は需要と供給によって決まります。
欲しがる人(需要)が供給されるモノ(供給)の量よりも多ければ価格は上昇し、供給されるモノ(供給)の量が欲しい人(需要)の数よりも多ければ価格は下がります。
コーヒーも生産量(供給)に対して飲む人の数や消費量(需要)が増えれば価格は上昇します。
1975年にはブラジルで霜害(霜が降りることでコーヒーの木が枯死する被害)が発生し、コーヒー豆の価格が高騰しました。これは、ブラジルが世界のアラビカ種生産量の大部分を占めているため、世界市場に影響を与えたためです。
この影響で、コーヒーの主要市場であるニューヨーク市場の価格が急上昇しました。しかし、翌1976年から生産量が回復し、価格も次第に落ち着いていきました。
最近では2021年にもブラジルで霜害が発生し、2020年に比べて60kgの麻袋で約1300万袋の減産となり、価格が高騰しました。例年通りなら生産量が戻り、価格が落ち着くはずでしたが、2022年以降も価格の高騰が続いています。
かつては需要が大きくは変わらない状況だったので、生産量が戻れば価格が落ち着きました。しかし、人口増加に伴って、コーヒーを飲む人の数も増えている現在では供給不足の傾向が強まっています。
現状では深刻な供給不足には至っていませんが、後述する「2050年問題」など将来的な供給への不安と相まって、価格上昇を引き起こしている可能性があります。
要因②気候変動

上の図は、ブラジルコーヒー生産地の気候変動パターンを色分けしたもので、色の付いたエリアがコーヒー栽培が可能な地域を示しています。
左の図現在から右の図未来(2050年)になると色がなくなっています。つまり、コーヒー栽培に適さなくなることを表しています。
2024年、ブラジルでは過去70年以上で最悪の干ばつが発生し、コーヒー生産に深刻な影響を及ぼしました。これにより、コーヒー豆の国際価格は約50年ぶりの高値に達し、アラビカ種の価格は2024年に約70%上昇、2025年初頭には1ポンドあたり4.30ドルという史上最高値を記録しました。
南米だけでなく、周期的な異常気象では説明のつかない気候変動が起きています。
エチオピアのコーヒー生産状況を見ても、その影響は顕著であり、弊社の人気商品でもあるSidamaエリアのALO Berry (Underscreen) がまさにその代表例です。
かつて寒すぎてコーヒーが育つことができなかった土地であるALO(アロ村)ですが、2020年ごろからコーヒーが育つようになりました。これは気温の上昇によるものです。
この現象はエチオピアに局地的に起こっているわけではなく、世界全体で起きており、「2050年問題」として注目を集めています。
気温上昇によって標高の高い地域ではコーヒー栽培が可能になる一方で、標高の低い地域では気温がコーヒー栽培の適正範囲を超えたり、降雨量の変化によって精製プロセスに影響を及ぼし、生産量や品質の低下につながるリスクがあります。
要因③為替の影響

コーヒー豆は米ドルで取引されているため、円安の現在では輸入品であるコーヒーの価格も高くなっています。
また、世界全体でインフレが進行しているため、生産地でも経済が上昇傾向にある一方で、日本ではそれほど収入が増えていないため、結果的にコーヒーの価格が割高にならざるを得ない状況です。
円安が一概に悪いわけではありませんが、消費者の視点から考えるとあまり嬉しくない状況であることは間違いないでしょう。
エチオピアの今後

◆生豆の価格について
エチオピアでは、かつてない速度で生豆の価格が上昇しています。
2020年ごろ、生産者に支払われるコーヒーチェリーの価格は1kgあたり50エチオピア・ブル(ETB)でしたが、2024〜2025年には80〜90ETBに達し、SidamaやYirgacheffeといった一部の地域では100ETBにまで上昇しています。
(※ 価格には地域差やチェリーの品質による幅があります。)
最もシンプルなケースとして、自社農園からコーヒーチェリーを購入する場合を考えると、同じ金額を払っても数年前の半分しか購入できない状況になっています。
(実際には、選別・倉庫・物流に携わる労働者の賃金上昇も影響していますが…)
◆生産について
幸いにも、エチオピアはコーヒー生産地の中でも比較的涼しいため、気候変動の影響は他の地域よりも少ないとされています。しかし、適性度は徐々に低下する可能性が指摘されています。
実際、エチオピアのYirgacheffeエリアの同じ農園のコーヒーでも、2020年前後と2023〜2025年では味わいが変化しているように感じます。
もちろん、農作物である以上、毎年同じ味にすることは不可能です。しかし、特に人気の高い土地では過剰生産による連作障害が発生し、土地の回復が追いつかないという指摘もあります。
これまでエチオピアでは、特別なケアをしなくても土壌のポテンシャルによって高品質なコーヒーが生産されてきました。しかし、気候変動や連作の影響を受け、今後は適切な管理が必要になってくるかもしれません。
とはいえ、小規模生産者が多いエチオピアでは、土地の負荷を考慮しながら生産者の生活を支えるだけのコーヒーを作るのは決して容易ではありません。
◆これからの展望
クオリティへの関心が高まる中、Sidamaエリアの生産者であるTamiru(タミル)さんやNigusse(ニグセ)さんのような素晴らしい生産者が手がけるコーヒーの需要は、今後ますます高まることが確実です。
極端な言い方をすれば、これまでは消費国が生産国から「買ってあげる」という意識が少なからずあったように感じます。しかし、世界中から購入希望者が集中することで、この構図は逆転していくと予想されます。
生産者としては、当然ながら高く買ってくれる相手に販売したいと考えます。さらに、生産量が減少すれば供給量が限られ、最悪の場合、価格の問題以前に「売ってもらえない」事態も起こり得ます。
そうした状況を避けるためにも、私たちはインポーターとして、持続可能な適正価格での継続的な購入を通して、生産者との良好な関係性をこれからも築いていくことが重要だと考えております。
また、そのためには私たちから買ってくださる皆様のご理解・ご協力も必要不可欠です。
美味しいエチオピア産コーヒーをこれからも日本で楽しめる未来のために、Ethiopian Coffee Houseでは、今後も現地エチオピアのリアルな情報の発信や各種プロジェクトを行ってまいります。
ぜひご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
次回の記事では、現地サポートプロジェクトについて、取り上げる予定です。
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